きらきら
「泣く理由がもうないだろ。何で泣く?あのネットの女が気になる?お前それほどあの女が好きだった?」
必死になってる堀田君が可笑しくて、私は自分が泣きたいのか笑いたいのかわからなくなる。
「あ、今度さ、あれ行こう。東京のケーキ!ほらネットに出てたホテルのケーキ。あれ行こう、俺がおごる」
堀田君は困った声を出して私の機嫌をとるようにそんな発言をするけれど、私が「一切れ3000円するんだよ」って涙声で言ったら「はぁあ?3000円?一切れが?ホールじゃなくて?えーっ!ふたりで6000円?」と驚いた。「無理無理いや無理でしょう。不二家とか近くにないの?」そう言ってポケットからスマホを出して東京のケーキ屋さんを探し出す。その様子が必死で楽しくて私は笑い出す。
「変な事言ったかも。ごめん」
堀田君は真面目な顔で私に言い、私は首を横に振る。
「来週の日曜日。休みだから3000円のケーキ食べに行こう」
堀田君は優しい声を出して私に言う。
「朝早く出て、夕方帰るパターンで行こう」
「……気を使わなくていいよ」
「いやそうじゃなくて、ずっと誘おうと思ってたから」
「無理しなくていいよ」
「俺が3000円のケーキ食べたいんだよ。ひとりじゃ恥ずかしいから付き合え」
堀田君は私の頭をパチンと叩き、立ち上がって大きく伸びをする。
「お前、卒業して……可愛くなったわ」
そして急にそんな事を言って、乱暴に更衣室を出て行った。
堀田君が立ち去った更衣室にホコリが舞う
キラキラ 舞う。