きらきら

「お前が思ってるほど俺達はお前の事なんて思ってない!」

バスケ部のエースはひどい事を言う。

「わかる?お前が『私なんて存在感ないんでしょ』とかイジイジしてるけど、俺達はそんな事すら思ってない。頭にない。お前が自意識過剰すぎ。お前は俺達と同じクラスの仲間それは外せない。お前が拒否してるだけ」

「自分から拒否せざるを得ない状態を、人気者の堀田君は知らないでしょう」
つい声を荒立て言うと堀田君はムッとして私の目をジッと見つめて、自分の気持ちを落ち着かせてから静かに話を始めた。

「お前、高三の全員参加の体育祭に出なかったろ」
一番嫌な思い出を彼は持ち出した。そう私は全員参加の体育祭に出なかった。出なくても誰も気付かなかった。誰も私の存在を気付かない。居ても居なくていい存在。唇をかみしめて「出なかった。みんな気付かなかった」って強く言うと、堀田君は「みんな知ってたわ」って小さく言って私の隣に座り込む。大きな影ができて光が消え更衣室のキラキラが見えなくなった。

「みんな気付いてたけど知らん顔してたんだよ。お前が運動オンチで体育が嫌いで体育祭が嫌いって事をみんな知ってたから、先生にも言わずに黙ってたんだよ」

堀田君は笑う。何年も前の昔のいたずらをネタバレするようにを楽しく笑って話してくれた。

「誰かがお前が居ない時『そーいえば佐々木は何にも出てないかも』って言いだしたけど、『佐々木は体育祭嫌いだからいいんじゃね。俺達いつもノート見せてもらってお世話になってるし』って他の奴が言い出して『学校祭の衣装もいっぱい作らせたよねー。みっちゃんいて助かったよ一生懸命やってくれたから間に合った』『俺らが騒いで先生に怒られて巻き添えにさせた事もあったな恩があるわ』『みっちゃんが出たくなかったら問題ないんじゃない。知らん顔してあげようよ』って……暗黙の了解」

意外な真実に涙も止まり口をポカンと開けて堀田君を見つめたら「アホ面ウケる」ってまた笑う。

そんな事知らなかった。

「クラス会でみんなに礼を言え仲間だろ。少くても俺はそう思ってるよ」

大きな手で堀田君は私の頭をポンポン叩く。

だから私はまた別の涙が浮かんでくる。それはさっきより温かい涙。
どうして泣いてるのか自分でもわからないけど、☆るいーず☆に追い詰められて閉じ込められたガラスの大きな箱が崩れて割れて砕けた気分だ。息苦しさが消えてゆく。私が意味もなく泣き出すと堀田君は慌てて焦り出した。



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