秘密 ~ホテル・ストーリー~
亮平は、背中に彼女のぬくもりを感じながら部屋に戻った。

上着を脱がせてやり、ベッドに寝かせる。汗がにじんで来た。

「まったく、何やってんだよ」

部屋のカーテンを少し開けてみる。
レインボーブリッジに観覧車。未希の体を少し揺すってみたけどびくともしない。
もう少しここに居ていいかな。何もしない。ただ見てるだけ。

急に、電話が鳴った。
「おい、起きろって鳴ってるぞ」揺り動かしてるけど、反応がない。
どうしようか、相手に相談するつもりで電話に出た。

「もしもし?」
――お前、誰だ?

相手の横柄な態度に、亮平もカチンときた。

「課長こそ何の用ですか?」

――いや。別に。たいしたことは。

「俺、知ってますよ。咲田とのあなたの関係」

――だったら、何なんだ?

「奥さんと別れてください。子供の写真なんか送りつけやがって」
未希は、そのことで苦しんでた。

――悪かった。妻が勝手にやったんだ。

「その気がないなら二度と近寄るな。今度電話して来たら、あんたとのこと奥さんにばらす」

――分かった。もう、連絡しない。どっちみち今日が最後だと思ってた。彼女によろしく伝えてくれ。

着信履歴を消して、ベッドに寝てる彼女の横に腰を下ろす。

「ごめんな。見ていられなかった」
そっと触れたかった唇に指で触れる。

親指で拭ってやると少し唇を開いた。
少しだけ。
ほんの少し触れるだけ。

亮平は、顔を近づけてそっとキスをした。

「岩井さん?来てくれたの?」
彼女の腕が亮平の首に巻きついた。
「お願い。早くキスして」
「おい、待てよ」
「いや。ずっと待ってたの。早く抱いて」
未希の方からキスをしてきた。
亮平は、必死にこらえていたけれど、彼女が離すまいと必死に体を押し付けてくるので、とうとう覚悟を決めた。

「お願い。どこにもいかないで。好きなの、早く来て」

「いいのか?俺で?」

未希の目が大きく見開いた。
「俺も君のことずっと好きだったんだ。君の方からキスしてくれるなんて」

「ええっ?」

言えないよな。今さら人違いだなんて。
彼は、未希に向けてくすっと笑う。

あんな片手間に君を愛する男になんかに、負けないくらい君のこと大切にするから。

今日のことは、ずっと君に言うつもりはない。秘密にする。

亮平は、彼女が彼を受け入れるまで、何も言えないように、何度もキスした。

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