甘い音色は雪で蕩ける。
降りたら、彼が……待っている。
そう思うと、胸がドキドキを通り越して甘く痺れて行く。
自分の体ではないみたい。
二階……一階……。
エレベーターが一階に到着してドアが開く。
(……あれ?)
夜のロビーは、クリスマスだからかまだ人で賑わっているけれど、ケイさんの姿は見当たらなかった。
「咲美―さーんー」
「うひゃっ」
後ろから目隠しされて飛び上がった。
「うひゃって、可愛いですね」
「わ、わ。わー!」
ロビーの注目を浴びちゃうし、絶対マスカラが指先に付いちゃってるだろうし居たたまれなくて、私が彼の手を掴んだ。
「そ、外に行きましょう!」
「わー。今日は咲美さんの方が大胆」
喜ぶケイさんの声に耳まで真っ赤になりながら、昨日見たお城の前に立つ。
今日はホワイトクリスマス。
白く溶け込んだ景色の中で、ふわりと彼が自分のコートを私の肩にかける。
「お疲れさまでした」
「ありがとうございま、す」
真っ直ぐに見つめられ、恥ずかしくて下を向いた私に、彼が一本の薔薇の花を差し出す。