甘い音色は雪で蕩ける。
「今度は、俺がオーナーになった時にもう一度弾いて貰おうかな」
「へ」
「俺の為だけに、ね」
ゆっくりと薔薇の花を受けとる。
零れ落ちた私と彼の白い息を吸い込んで、薔薇はきらめく。
化粧が落ちていないか不安だったけれど、私は目を閉じて昨日の続きを待った。
ゆっくりと降りてきた彼の唇は、薔薇のように刺激的で甘くて私の身体を痺れさせた。
「ところで、雪でタクシーがなかなか掴まらないらしいよ。今日はもう帰るの諦めた方がいいんじゃない?」
「うー。クリスマスの満室のホテルで泊まれるとしたら更衣室?」
首を傾げる私に、彼がクスクスと笑う。
「地上47階の俺の部屋に浚おうと思ってます」
「さ、さらう」
「白に染まった夜景は美しいと思いますよ。でもまあ」
俺も紳士のふりをした狼なんで、何もないとは言いませんけどね。
抱きしめられて耳元で囁かれた。
そんな大胆なことを言いながらも彼の胸の音は、ドクドクと大きく高鳴って、私の音としんしん降る雪の音に溶け合い、蕩けて甘く奏でていた。
Fin


