甘い音色は雪で蕩ける。
「浚いに?」
「ホテルが君を手放しても、俺は君を手放せない」
カサカサした唇に、彼の指がなぞる。
「明日は、もらいます」
青い目に見つめられて、動けなかった。
私も、この人をもっと知りたい。
甘く痛む胸は、夢じゃないのかと信じられない現実に足掻いている。
「明日、待っています」
こくりと頷くと、彼は私をタクシーまでエスコートしてくれた。
夢のようで、ふわふわと真っすぐ歩けない私は、酔っ払いに見えたかもしれない。