そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「ごめんなさいね、真由さん。
悪気はないのよ。
ただ慎吾がまた悪い女性に騙されているんじゃないかと心配で......」


大した役者ね。
全く悪いとも思ってないくせに。

さも息子を心配している母を演じながら、心配そうにため息までついて、彼女イビりをする姿は逆に笑えてくるくらい。


「私は、」


否定しようと口を開きかけたとき、今度は慎吾の方が私を制して一歩前に出た。


「ご心配頂きありがたいですが、必要ありません。
真由は、僕の選んだ女性です。

では、失礼いたします。いこう、真由」


は?これ、本当にあの、残念御曹司の慎吾?

堂々とそう宣言したかと思うと、慎吾は私の手をとる。


「慎吾?」


まさか慎吾があんなにはっきりと言い返せるなんて思わなかった。
 
てっきりヘラヘラ笑ってるか、私と慎吾母の間でオロオロしてるだけかと思ったのに。


とんでもなく失礼なことをこっそり思いながらも、途中で出てきて大丈夫かと聞けば、役目は果たしたから大丈夫だと言うので、慎吾に素直に従うことにした。




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