そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
企画書......?

思わずまじまじと見てしまったけど、静かになっていたスマホが再び鳴り出したことで、はっとしてそれを操作する。

ロックも何もかけてない画面を見ると、九条明?

......ああ、例の一番上の兄御曹司ね。


「慎吾?お兄さんからだったみたい」

「......分かった、明日かけ直すよ。
ありがとう」
 

再びお風呂のドア越しに声をかけると、慎吾はあっさりとそう返事をした。

後でかけ直すとかじゃなくて、明日でいいんだ。


まあ慎吾が良いって言っているんだからいいか。
ようやく諦めたのか、電話もかかってこなくなったし。


......それにしても、無防備すぎない?

兄御曹司の電話のことはそうそうに意識の外に追いやると、やっぱり慎吾の無防備さが気になった。 

こんなに簡単に付き合ったばかりの彼女に、持ち物を触らせて大丈夫なの?

前の彼女にお金を盗まれたことがあるというなら、もう少し警戒してもおかしくないはず。





どうにもそこが引っかかった私は、お風呂上がりの慎吾にそれとなく聞いてみた。


「何で?さすがに知らない人には触らせたりしないけど、真由は何かとったりしないよね?」

「もちろんよ。
でも.......、こんなこと言いたくないんだけど、前の彼女に現金とパソコン持ち逃げされたんでしょ?
慎吾はトラウマになったりしてない?」


私が貸したスウェットを着ながらも不思議そうに私を見る慎吾に、言葉を選びながら慎重に話をする。 

身長が全然違うから、丈がピチピチ。

慎吾用のものを用意しないと。



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