そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「うーん......。 
逃げられたことはショックだったけど、お金は何か事情があったのかもしれないし、必要だったのかもしれないから」


だから、どんな事情よ。 

サイズの全く合わないスウェットも残念なら、発言もこれまた残念。お人好しもここまでくると病気だ。

苦笑いでそんなことを言う慎吾に、無性にイライラする。


「そっか......、そうかもしれないね。
でも、私は慎吾が心配。
世の中には悪い人間がたくさんいるから」


たとえば、私とか。


金のあるところに、人はハイエナのようによってくる。

慎吾みたいなお人好しで騙されやすい御曹司なんて、即騙されるのがオチだ。


「分かった、心配してくれてありがとう。
気を付けるよ。これからは、真由以外の人には勝手に触らせないようにする」
   

だから、大丈夫だよ、と何の疑いも持っていない目で見られてしまうと、さすがの私も心が痛い。

強欲なオッサンとかなら、罪悪感なかったかもしれないけど。慎吾といると、自分が極悪非道な人間に思えてくるから困る。

無防備、無警戒というのは、時に最大の防御なのかもしれない。







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