そこの御曹司、ちょっと待ちなさい!
「53Fのレストランいったんだろ?
ちょうど居合わせたやつがいて、噂になってる」

「......なるほどね」

 
慎吾にプロポーズされたのが、金曜の夜。

土日は、ちょうど親戚の法事があり、田舎に帰って過ごした。

そして、今日が月曜。
 

たった三日の間にすでに元カレにまで知られているとは思わなかったけど、噂なんてすぐに広まるもの。

きっと明日かあさってには、受付の同僚にも全員知られているだろう。


「しかし、九条もかわいそうに。
結婚まで考えた女に二回も連続で捨てられて。
俺だったら立ち直れないな、絶対」


何を言ってきても大して反応も示さずにいると、そんなことを言ってくる大輔。

いつもの私なら大輔に言われっぱなしなんてことは絶対にないけど、今回ばかりは何も言い返せない。

兄と浮気して蒸発した前の彼女よりも、ある意味私の方がひどいかもしれない。


「あれだけセレブ妻になるって豪語してたのに、何で断ったんだよ」

「騙し続けるのがしんどくなったのよ。
決して善人ではないけど、自分が思ってるよりも悪人にはなりきれなかった。こう見えて意外と情に深いところもあるから」

「どこがだ」
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