クリスマスイヴを後輩と
三年前にいた彼氏はもういない。

「あの……、特別賞にかえてもらえませんか」

「未華子ちゃん、真面目な顔して冗談言わないの。クリスマスイヴに一泊十万円のエグゼクティブスイートなんて、そうそう泊まれるものじゃないのよ」

わかってます。わかってますとも。だって、ずっとずっと憧れていた『ホテルエトワール·フィラント東京』の、しかもエグゼクティブスイートですもの。

ああ、神様、どうしてこんなにすごいご褒美を彼氏のいない私にくれたのでしょうか。

そうだ、友達を誘おう、って友達は結婚していたり、彼氏がいたり。おひとりさまは私だけ。

部屋に帰ってお気に入りの毛布にくるまりながら思った。

私がクリスマスイヴに高級ホテルで一緒に泊まりたい人は世界で一人。後輩の高瀬柊司くん。

高瀬くんはとても綺麗な顔をした素敵な人。

まだ少年ぽさを残した笑顔に油断していると、艶を帯びて輝くブラウンの瞳に吸い込まれそうになって、いつも私から目を逸らしてしまう。本当はずっと見つめていたいのに。チェリーみたいな唇は触れたくなるほどかたちが良くて。仕事熱心で。

私はそんな高瀬くんに恋をしている。でも、誘えない。五歳も年下の彼を、私は誘えない。



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