クリスマスイヴを後輩と
今年のクリスマスイヴは土曜日。その日に泊まれるなんて、こんなチャンスはもう二度とないかもしれない。私は結局、ひとりで泊まることにした。


───………**


フランス語で流れ星という意味をもつ、ホテルエトワール・フィラント東京。

ラピスラズリ色の外壁のなかに鏤められたプラチナの輝きはまるで本物の夜空を見ているかのようで。

私は胸をときめかせながらチェックインを済ませ、ベルガールの案内で三十階の部屋へと向かった。

カードキーで開いた扉の向こうは、まさに夢のような空間だった。

リビングルームにはヨーロッパ調のインテリアと、エレガントなシャンデリア。大きな窓の向こうには都会の夜景が広がっていて。

普段から見ているスカイツリーとビル群が今夜は宝石のように思えた。

ベッドルームも高級感たっぷり。天井にはプラチナ色の流れ星が瞬いていて、プラネタリウムのよう。

取り敢えず、広いベッドにダイブした後、リビングのソファで夜景を眺めた。

「ふうー」と、息をつく。

やっぱり、誰かと来るべきだった。誰か、ではなく、高瀬くんと来たかった。

高瀬くんは今、誰とどこにいるのだろう。

プライベートな話はあまりしたことがないけれど、きっと素敵な彼女がいるんだろうな。年下かな。そりゃ、年下だよね。高瀬くんの隣を歩く女性はモデルさんみたいな、ではなく、本当にモデルさんかもしれない。

ああ、いけない、いけない。

今夜はクリスマスイヴ。楽しまなくちゃ、とレストランでおいしいシャンパンとクリスマスディナーをいただいた。

おいしかった。おいしかったのに、周りはカップルばかりで、その温度差が激しくて。

私、いつから人の幸せを幸せだと感じられない人になってしまったのだろう。


バーで飲むつもりだったけど、今夜は酔えない気がして部屋へと戻った。

大きなベッドに再びダイブ。

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