こんな男に誰がした!
弥生は、思ったとおり、語学力を磨くためにイギリスに留学し、合わせていろいろなマナーや妻としての教養を学んできたようだ。
9月からは、大学に復学し、翻訳家を目指すようだ。
彼女は、英語の他に、フランス語も学んでおり、フランスにも行きたいらしい。
また、留学するのは、勘弁してほしい。せめて、婚約した後にならばと考えてしまう。
「食事も済んだし、この後は、二人でゆっくり話をしてみたらどうかしら。」
母たちは、見合いの常套句の言葉で、俺たちを見放した。
そして、お決まりの通りホテルの庭を散歩、と考えていたら、暑いし、着物だからいやだと彼女に簡単に拒否された。
「君はどうしたい?」
「まずは、着物を脱ぎたい。」
「じゃ、君の家へ行こう。着替えて出直そう。」
俺たちは、彼女の家へ向かい、俺は、彼女が着替えるまで、車の中で待っていた。
彼女は、水色の細かい花模様のチュニックにタイトな白のプリーツスカートを合わせていた。
夏の爽やかさ満載の服装に、センスのよさを感じる。
背広の俺と並んでも、違和感がない。
昨年より伸びた髪が、大人になった雰囲気を表すように背中で揺れている。
この1年が、二人をどのように成長させたのか、これから次第に明らかになるのだろうなあ。