こんな男に誰がした!


総務課の仕事と、フランスの工場の実情を把握するのとで、目一杯忙しい毎日を過ごしていた。

お陰で、弥生にも、なかなか会えず、弥生不足でもあった。

一応結婚式は、12月12日に決まり、それに向けての準備もしなければならない。

夏には、また、フランスにも行く予定でいるから、余裕がなく、自分の時間は、無いに等しい。




今日は、久しぶりに8時に仕事が終わり、弥生に連絡しようと携帯を持った時、さやかさんから連絡がきた。

今頃どうしたのだろうか、と思いながらでた。

「浩輝、忙しいのにごめんなさい。今大丈夫?」

「大丈夫だけど、どうしたの?」

「今、会社の前にいるけど、ちょっと話せないかな?」

「会社の前?」

俺は、窓のブラインドの隙間越しに下を見た。ちょっと先に白い車が止まっているのが見えた。

「そう。会社の前に車を止めて、中にいるから、目立たないよ。」

「ここからも見えるよ。」

「一体どうしたの?急用?」

「そうよ。急用よ。どうしても聞いてもらいたいことがあるの。」

俺は、どうしたものか、思案にくれた。

会って、下手な誤解をうみたくないし、冷たくあしらうには、さやかさんの様子がおかしい。
< 43 / 63 >

この作品をシェア

pagetop