こんな男に誰がした!
総務課の仕事と、フランスの工場の実情を把握するのとで、目一杯忙しい毎日を過ごしていた。
お陰で、弥生にも、なかなか会えず、弥生不足でもあった。
一応結婚式は、12月12日に決まり、それに向けての準備もしなければならない。
夏には、また、フランスにも行く予定でいるから、余裕がなく、自分の時間は、無いに等しい。
今日は、久しぶりに8時に仕事が終わり、弥生に連絡しようと携帯を持った時、さやかさんから連絡がきた。
今頃どうしたのだろうか、と思いながらでた。
「浩輝、忙しいのにごめんなさい。今大丈夫?」
「大丈夫だけど、どうしたの?」
「今、会社の前にいるけど、ちょっと話せないかな?」
「会社の前?」
俺は、窓のブラインドの隙間越しに下を見た。ちょっと先に白い車が止まっているのが見えた。
「そう。会社の前に車を止めて、中にいるから、目立たないよ。」
「ここからも見えるよ。」
「一体どうしたの?急用?」
「そうよ。急用よ。どうしても聞いてもらいたいことがあるの。」
俺は、どうしたものか、思案にくれた。
会って、下手な誤解をうみたくないし、冷たくあしらうには、さやかさんの様子がおかしい。