こんな男に誰がした!
叔母さんの話では、どうやら癌が再発したらしい。まだ手術から1年も経たないのに。
叔母さんが迎えにくるが、会社の前はまずいから、場所を変えることにした。
俺は、和食の隠れ家レストランを選び、無理を承知で、予約を入れてもらった。
さやかさんに先に行ってほしいと伝え、そこに叔母さんにいってもらうことにした。
俺を頼ってくれたさやかさんには申し訳ないが、俺は直接の接触を避けた。弥生のために。
「片桐さんがいてくれて、助かったよ。俺だけなら、絶対に会いに行っていたと思う。そして、大ごとになっていたかもしれない。まだまだ俺は、甘いな。」
「浩輝さんは、優しいのですよ。でも、誰にでも優しいのは、罪なことです。優しさを向けていいのは、弥生さんだけです。それを肝に命じてくださいね。」
片桐さんは、言葉は静かだが、言っていることは、厳しい。
彼なら信じて一緒にやって行けると、確信した瞬間だった。
そして、彼なら俺を正しく導いて成長させてくれると、頼もしく思えた。