聖夜の光



私、加賀小夜子(かがさよこ)と姉の陽奈子(ひなこ)は、一卵性の双子である。


親ですらいまだに見間違うほどに、容姿に関しては瓜二つ。
但し中身は全く似ても似つかない。

大手商社の受付嬢を務める陽奈子は、昔から明るくてハキハキしていて、少しずるいと思える時があるぐらい愛嬌のある性格で、いつでも人気者。

今付き合っている彼氏ともラブラブで、今夜のキャンセルの件はともかく、普段は大事にされているらしい。


対して私は、地味に小さな印刷会社の事務員をやっていて、生来の口下手と不器用な性質も相俟って、趣味らしい趣味と云えばカフェ巡りをして甘いものを食べる事ぐらいで、今まで男性とまともに付き合った事もない。


お互い水と油の性格だけれど、そのせいか却って不思議とウマが合い、私と陽奈子はとても仲良しの姉妹だ。

でも私には一つだけ、姉の陽奈子に隠している事がある。


恋愛に興味がないなんて顔をしているけれど、本当は、好きな人がいるのだ。


けれどその人は、私が決して好きになってはいけない人。
藤井章吾(ふじいしょうご)さんというその人は、姉の彼氏だったりする。



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