悪役の私
「ん…結衣…?」
泣いている私に気が付いたのか、潤は私を抱き寄せる。
「怖い夢見た?」
半分寝ぼけながらまた私の頭をぽんぽんと、優しく包み込んでくれる。
馬鹿だなぁ。
潤は本当に馬鹿だよ…。
私は今、他の男のことで泣いているんだよ。
潤のことなんて考えてなかったんだよ。
それなのに、こんなにも優しく包み込んで…。
「うっ…」
私は潤の前で声を押し殺して泣いた。
ごめんなさい。
…ごめんなさい。
心臓が張り裂けそうなくらい痛いよ。
優を好きになってからこんな風になってしまうのは何度目だろう。
…馬鹿な潤は、大馬鹿な私を抱きしめたまま眠りにつく。