もう一度出会えたら
『何ですか?そんなに見つめられると顔に穴があきそうです。』


彼がククッと笑いながらそんな言葉を吐いた。


何故かなんて分かっているくせに、私があんな事を言ったからか…


彼は優しい仮面を外してしまったようだ。


「…なぜ?……」


『さあ…なぜだと思いますか?』


それが分からないからこうやって聞いたのに…意地悪な彼は教える気はないらしい。


そして時々抱きしめるように握ってくるのだ。


それが何だかもどかしくて…だんだん手だけじゃ物足りなくなってくる。


彼は私をどうしたいのだろう? そして私自身も………


しばらくするとお手洗いに行きたくなって…彼に小声で話しかけた。


「あのね、ちょっとお手洗いに…」
『手は離しませんよ。僕も一緒に行きますから。』


彼の言葉にギョッとして目を見開いたまま固まってしまう。


そんな私を見て、ふっと笑いをこぼした彼が


『…冗談ですよ。僕、そんな趣味ないですから。菜々さんは何でも本気にしすぎです。』


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