もう一度出会えたら
振り向いた先に見えたのは、こっちを見て固まった様に驚いている彼の顔…


そして、彼の腕を縋るように掴んでいるショートボブの綺麗な女性だった。


2人がどんな関係か…なんてそれだけでは真実なんて分からない……。


だけど2人の間にはただの知り合いだけでは片付けられない空気があった。


また…なの?心がそんな思いに覆われていく…。私が目をそらすよりも一瞬早く


彼の方が先に私から目をそらした。


こんなところで動揺なんて見せたくない…


前を向いた私は止まっていた足を動かし階段を駆け下りた。


タイミングよく電車が来てそれに乗って帰るつもりだったのに…ホームに降り立


ったその瞬間、無情にも私の横を走り出し駅から出ていく電車をただ茫然とみつ


めていた。


真っ暗な夜の闇の中にやがて小さな灯りしか見えなくなった電車を見送りながら


ポツリとこぼれた言葉が心に痛いほどしみた。


“ やっぱり…”


彼は後ろから追っても来ない……。


同じ沿線でも今まで一度もホームで会った事なんてなかったのに、なんで今日に


限ってこんな最悪な形で出会ってしまったんだろう……。
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