もう一度出会えたら
相手があの子だったから…こんな気持ちになってしまうのだろうか。


彼女が今の彼とどんな関係なのか考えただけで不安で胸が押しつぶされそうにな


る。駅で2人を見てしまったあの時、実は彼だけじゃなく彼女も私に気がついた。


私に気づいた彼女の目は悲しそうだった目から、みるみるうちに私に対する


憎しみや怒りのこもった目に変わり鬼の様な形相で私を睨んでいたのだ。


あの目に耐えられなくなり、私は2人から目をそらし階段を駆け下りた。


学生時代は彼女と関わったこともないのに、自分の意思とは違うところで理由も


分からないまま敵意剥き出しの感情をぶつけられてきた事は本当に不快だった。


だけど、先日の駅でのあの目は…彼を渡したくない!そんな気持ちが込めれてい


る様に見えた。


まだ9時半…と早いけど明日に備え、部屋の電気を消してベッドに入った。


布団に入ってからは、無理やりに思考を中断させ眠る事にただひたすら意識を向


けた。その時、彼が真っ暗になった私の部屋を外から見ていたなんて……思いも


しなかった。


翌日、戸締りをして荷物を持ち沈んだ気持ちのまま東京駅に向かった。混むのは


分かっていたから時間には余裕を持って家を出た。私が乗る新幹線までまだ時間


は十分にある。両親へのお土産を見ながら歩いていた時、沢山の人に溢れたこの


駅で私はあの人の姿を見つけてしまった。


『……菜々』


彼もまた時間が止まったかの様に私をその目に映したまま立ち止まっている……。


家族の元へと帰省するのだろう…片手にはキャリーケースを持っていた。


逢いたくて愛しくて…だけどどんなに願っても逢えなかった。


あの日以来初めて、私は彼の目を正面から見ることが出来ている。
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