もう一度出会えたら
『確かに立ちっぱはキツイよな。飛行機の方が安くて早いのに』


「うん、そうなんだけど私、高所恐怖症だから……飛行機とか無理。高校の修学旅行で沖縄行った時は泣く泣く乗ったけど、あの離陸時の浮き上がる感じも苦手で、その点、新幹線は景色も見れるし快適だし楽しいんだよね」


『へぇー高いのダメなんだな』


そんな話をしているうちに駅に着いた。


1人になると、途端に今朝の涼くんの言葉を思い出してしまう。


ホームに降り、電車を待つ間も電車に乗ってからも彼がいるんじゃないかと気に


なり必要以上に周りを気にしながら帰ってきた。


結局、朝とは違って彼に会う事はなかったけど彼に電話をかけることも


できないまま家に帰っても時間だけが過ぎていく。


気づくと遅い時間になっていたので慌てて明日の用意をする為、クローゼットを


開けて帰省の荷造りに取り掛かった。


涼くんは今も鳴らない私からの電話を待ってくれているんだろうか……


このままで良いとは私も思っていないけど、今朝言えなかった言葉が


どうしても心の中に引っかかっている。素直に彼にぶつけてしまえばいいのかも


しれないけれどあの時から刺さったままの棘がチクチク痛んでまた同じ思いをす


るのではないかと怖くなった。


一度は彼を信じると決めて前を向いたつもりだったのに…。
< 203 / 221 >

この作品をシェア

pagetop