もう一度出会えたら
さっきまであんなに幸せだったのに、なんでこんな事になってしまったんだろう…


もう何も考えたくない、何も聞きたくない…


どのくらいの時間が経ったのか、彼の声が沈黙を破った。


『菜々…ごめん。
騙すことになって本当に申し訳なかった。
でも、菜々のこと好きな気持ちは本当なんだ……』


彼の声がすごく遠くから聞こえた気がした。


すぐ側にいたのに、手を伸ばせば届くほど近くに。


だけど私が触れることはもう許されないの?


あまりにも突然の出来事に受けたショックが大きすぎて、すぐには現実を受け入れる事が出来なかった。


その後、どんな風に彼と別れたのか正直よく覚えていない。


ただ一つだけ言える事は、彼には家庭があった。


だから私が身を引くしかなかったという事。
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