ブルーカクテルで乾杯を
* * *

「ごめんなさい。酔って、こんなつまらない話」
「いえ。その彼とは……?」
「この間連絡がきてね。今はアメリカで、近いうちに結婚するんだって。後輩にも先越されたし、人生ってうまいことタイミングが合わないものね」

五年後の今日。大学の後輩の結婚式会場が、思い出のこのホテルだった。
懐かしくなって、私は二次会に行かず、バーに足を向けた。

琥珀色の液体を口に含み、小さく笑って続ける。

「あの日、ここで出してもらったブルーのカクテル。名前も知らなくて。すごく綺麗だったなぁ」

あのカクテルに、心が救われた気がした。
思い出の夜景と共に飲み干して、前を向けた気がしたから。

でも、心が淋しくなる時もある。そんな時、またブルーのカクテルを胸に流し込んでしまいたくて。

「……僕の話も少しだけいいですか?」

頬杖をついて過去を思い出す私に、静かにバーテンダーが口を開く。顔を上げ、視線がぶつかると、彼は僅かに目を細めた後、おもむろに伏せた。

「ずっと、気になっていた人がいるんです。僕がまだ新人のバーテンの頃に、カクテルに涙を落としていて……その人は、儚くて今にも消えてしまいそうだった」

スッとカクテルグラス出され、その美しい色に目を見開く。

「ブルーキュラソーを手にするたびに思いだしていて。いつか、またお会いすることができたら、今度は笑顔で口にしてもらえたらな……って」

まさか、覚えていたのは私だけじゃないなんて思いもしなかった。

驚いた顔を向けている私に、バーテンダーの彼はふっと微笑む。
私は震える手で、ゆっくり夜景のようなブルーを喉に流し込んだ。

「あの日より、美味しくなってる気がする」
「もちろん。努力して待っていましたから。笑顔になってもらうために」

誰も悪くない。後悔もしてない。ちゃんと、私は立って歩いている。一歩ずつ。

「……ありがとう」

それと、五年前より笑えている。

カクテルグラスを見つめて私は微笑んだ。



おわり
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