仮に君と恋をしたなら



真山と親友でいた日常を何より守りたくて、放って置いて欲しくて私たちの関係を〝恋人〟と呼ぶだけのごっこ遊びのつもりで始めた嘘の関係。

私たちが何か変わるわけじゃない、面倒ごとを避ける為にただ呼び名を親友から恋人と変えてみようとそれだけだった。私たちがそのつもりでも呼び名を変えたら周りがそうはさせてくれない。現に、呼び名に振り回されている。

多分、もう真山とただの親友には戻れない。

私たちは引き返せないから今、その呼び名に寄せていく努力をしてしまっている。友人の信頼を失わない為に貫く必要があるから。

本当にそれで良いのかな?

真山はいつも協力的で、何度も助けられて来たけど、今回は協力されるほど苦しい。
でも、それだけじゃない悦びを得ている自分もいる。きっと恋人ごっこを始めなければ知らなかった見えなかったことへの悦び。

そして、徐々に興味が深くなっていく恐怖もあった。

結局のところ私はどうしたいんだ!と自分に腹を立てた。
真山はどう思っているんだろう。どうしてこんなことにまで協力的にしてくれるんだろう。
色んな感情や疑問が交錯している中、胸の辺りに差し出された掌は私の右手をゆっくりと引き寄せた。


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