仮に君と恋をしたなら
私たちは結局缶を開けずに鞄にしまい、当初の目的を果たすべくカップルが密集している湖の方へ果敢に攻めて行った。
基本、密着度が高い。
すれ違うカップル全て手を繋いでいるか腕や肩を組んで歩いている。
私と真山の間には子供1人通れるくらいの距離がある。
ここでは完全に私たちが浮いている。多分、真山もそれに気づいている。
「なぁ…、嫌じゃなかったら、繋いでみないか?手」
「え?」
ついに真山がそれについて触れた。確かに私も気にはなっていた。でも、その場の雰囲気に流されてとか周りの影響を受けて合わせる的な感じでするのは違う気もした。
「嫌?」
「あー、全然!嫌とかじゃない。何で繫ごうと思ったの?」
「カップルの心理を知る為…ってのもあるけど、山田が離れて歩いてっから。お前と変に距離作りたくないんだけど」
え、私が離れてるの?真山じゃなくて?
私は意識的に離れたつもりはないけど。考え事していたからかな。
それより、真山が雰囲気に流されて何となく言い出したわけじゃなくて良かったと少しホッとしている。
「変に詰めるのはいいんだ?」
「変なの?」
「変でしょ」
「ま、確かに。でも、これを俺たちはこれから日常にしてくんだろ?」
日常に…。私と真山の日常が大きく変化していく。