仮に君と恋をしたなら
見学というより、もう実験実習で他のカップルから何が学べたんだろうというくらい周りの記憶がない。
私たちは手を繋いだままファミレスへ入った。窓側の席へ案内され向かい合わせに座り、店員に水を出され、メニューを開く前にお互いテーブルの上へ私は窓側に真山は反対側を向いて、倒れるように伏せた。
「なんか…疲れた…」
「完全に気疲れってやつだな」
「いきなり親友から恋人なんて出来るもんじゃないな~」
「俺らそういう対象で見たことなかったもんな~」
友達にはすぐなれたのに、親友になるのも時間はかからなかったけど、恋人は難しいな。ごっこでこれだもんな。ごっこだから難しいのかな。
そもそもいつか終わる関係に興味が持てないし、だったらずっと真山と遊んでる方が楽しいからって恋愛が疎遠になって、ごっこでこの有り様。
ごっこくらいなら出来るだろうと思ってた。恋愛初心者にはごっこですら鬼門だった。
窓に映る真山越しに店員の運ぶデザートが目に入り、口内が糖分を欲した。
「真山、私はショートケーキにするよ」
私は頭の向きを変え、真山の後頭部に向かって言った。
「じゃ、俺チーズ」
そう言って真山も頭の向きを変えて、顔を向かい合わせた。