仮に君と恋をしたなら
「本当だ。特に熱もねーな。でも、気をつけろよ?」
「んー」
額に触れる真山の手が温かくて、大きくて少し心地よかった。
「あ、そうだ。今日の昼に購買で小宮に会って、一緒に食べないかって誘われたんだけど…」
「あ~、いいんじゃね?」
「…」
返答早くない…?もう少し考えてくれてもいい気がする。
「わかった。そうする」
「一人よりその方がいいだろ?」
私はひとりでも平気だけど。小宮のこともちゃんと知りたいと思っていたから、真山の許可が降りて良かったはずなのに、なんだか腑に落ちない。
「手、つなぐか?」
真山は手を差し出した。
「え?」
愛育北公園に行って以来、手をつないでいない為、かなり久しぶりのことだった。何故、急にそんなことを言いだしたのだろう。
「最近、ちゃんと恋人ごっこ出来てなかったろ?」
律儀だな。確かに朝以外はお互いに委員会ですれ違うことが増えて、朝の登校時も普通に恋人ごっこを始める前と変わらずに並んで登校しているだけだった。
「ん」
真山は私の手を取って、顔はそっぽを向いて少し前を歩いた。握った手の温度が上昇していく。こっちを向かないけれど、恐らく真山は照れている。覗き込んでやりたい。