仮に君と恋をしたなら



私たちは相変わらず恋人ごっこの最中で、恋人らしいことをしてみても、さして私たちの関係は特に以前と変わらない。手を繋ぐ行為への躊躇が前よりなくなったくらい。でも、初めて繋いでみた時と熱や脈の上がっていく感じは変わらない。

真山は私を家まで手を繋いで送ってくれた。



「じゃ、また明日な」

「うん」



真山はいつも私が家の中に入るまで見届けてくれる。これも親友と恋人の時との違い…真山との距離がグッと近くなったとは思う。私は変わらずに真山が隣に居てくれたら親友でも恋人でも何でもいい。その気持ちは変わっていない。けれど、さっきまで繋いでいた手の感触が消えない。

なんだかポーッとする。身体も怠い気がする。私は食事も入浴も早く済ませて寝ることにした。

翌朝、起きたら喉が乾燥していて、イガイガして痛かった。少し咳も出た。真山との登校中、真山が私の咳を心配した。



「大丈夫か?やっぱ風邪じゃねーの?」

「んー、かもしんない」

「病院行っとけよ」



病院は好きじゃない。風邪くらいで病院に行く必要もないと私は思う。真山は心配性だなと思っていた。



「病院はいいよ。こんなの風邪薬飲んで寝てれば治るでしょ」

「風邪を甘く見るなよ?急に発熱したり具合悪くすんだから」


「うん、気をつけるよ」




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