極上な彼の一途な独占欲
私は女の子の生態が詰まった控え室を片づけ、掃除機をかけ、鏡台やテーブルを濡れ布巾で拭いてピカピカにした。


「美鈴さん、こっち終わったので、私これで失礼しますね」


夢中になってあちこち磨いていたところに、ネギちゃんが声をかけてきた。

はっと我に返り時計を確認する。


「うわっ、ごめん、こんな時間まで。電車大丈夫?」

「はい、今帰れば」

「どうもありがとう。気をつけて帰ってね」


ネギちゃんがいなくなると、控え室の中はしんとした。そろそろ切り上げないと明日に響くと思い、私は最後に室内をチェックして、帰ることにした。

コートを着て消灯して控え室を出て、鍵をかけようとしたとき、ふっと背後に人の気配を感じ、はっとした。振り向いた先では、のんきな顔が目を丸くしていた。


「なんだよその形相」

「ヒロ…」

「痴漢か泥棒とでも思った? 元カレの気配くらい背中で嗅ぎ分けろよな」

「なんでまだ帰ってないの? とっくに閉場してるんだけど」


閉場後は関係者以外立ち入り禁止だ。当然ヒロだって入れない。

けれど彼の首からは、なぜか出展社パスがぶら下がっていた。


「あ、これ? いいでしょ、もらったの」

「また誰かたらし込んだの?」

「なに正義の使者みたいな声出してんの。自分が気に入らないってだけだろ? そういうとこ、いまだに区別できないんだな」


頭に来る。

もしかしたら誰よりも私のことをわかっている男。私を好きでもなんでもないから、観察する目も冷静で、ゆえに的確。

本人は悪びれず、ふてぶてしく無邪気な笑顔を浮かべている。こういう余裕が女を引きつけるのだ。半分自覚していて、半分は無意識なのがまた腹が立つ。


「私、帰るから」

「どっこい、今日は俺、美鈴と話すって決めてきたんだよね」

「は?」
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