極上な彼の一途な独占欲
思わず露骨に眉根が寄った。


「話すって、なにを?」

「それはお前次第だよ」

「冗談やめてよ、話したいことなんて…」


ない? 本当に?

つい正直に口をつぐんでしまったことに、ヒロが気づかないわけがない。

彼は満足そうににっと笑み、私の手を引いて歩き出した。


「どこ行くの」

「ゆっくり話せるとこ探してるの」

「でも、もうお店も閉まる時間だし、その辺で…」


夜の空気が容赦なく顔を冷やす。私はストールを口元まで引っ張り上げた。

こんなに寒いのに、ヒロの手は温かい。ずっとポケットに入れていたのか、それとも心と手の温かさは反比例するという、あれを実証しているのか。

あるプレハブ小屋の横を通りかかったとき、中の照明がぱっと消えた。

あっ、ここ、伊吹さんたちの控え室だ。そう考えた、ちょうどその瞬間だった。

本人が出てきた。

伊吹さんは最初、特にこちらに注意を払わなかった。コートを着て出てきて、ドアがきちんと閉まったのを確認するように軽く振り返り、そのとき視線が私の上を横切った。

通り過ぎた視線はすぐに戻ってきた。伊吹さんの目が驚きに見開かれ、私の顔を凝視した後、ヒロに握られた手に落ち、また顔に戻ってくる。

私たちは無言で見つめ合った。

静寂を破ったのはヒロの声だった。


「お疲れ様です、伊吹さん」


朗らかにそう言って、引き続き私を引っ張って行こうとする。私は抵抗した。
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