極上な彼の一途な独占欲
妙に限定的ではあるものの、ついぞ聞いたことのない謝罪の言葉がこの男の口から出たことに面食らい、私は口ごもった。

ヒロはいつもの、遊び道具を見つけたような光を目の上にひらめかせ、こちらに戻ってくる。目の前まで来ると両手で私の頬を挟んでわしゃわしゃと動かした。


「お前も問題があったよ? 自分は仕事仕事で全然俺のこと構ってくれないくせに、俺が同じことするとふてくされて」

「…あの頃は、暢子と会社を起ち上げようとしてたときで、必死だったの」

「俺にはそんなの関係ないし」


そうだった。こういう奴だった。

私を見下ろし、くすくす笑う。


「そういう勝手さもかわいかったよ。でも俺はめんどくさがりだから、だんだん嫌になっちゃったんだ。ただそれだけ。お前が気に病むことじゃないよ」

「今それを言われても」

「じゃあずっと言わないほうがよかった?」


黙った私の頬を、ぐりぐりと両手のひらがなでる。

ファンデがついても知らないよ。


「俺にはちゃんと罰が当たって、あの会社も追い出されたよ。美鈴がそれで溜飲を下げるような奴ならよかったんだけど、そういう子じゃないもんね」

「けっこう下がってる。残念ながら」

「じゃあ、少しは大人になったんだ」


ははっと嬉しそうに笑い、くいと私を上向かせる。

顔が寄せられ、はっとしたとき、誰かの手が私の肩を掴んで引っ張った。背中から倒れそうになったところを抱き留められる。

ぽかんと振り仰いだ先には、ぎろりとこちらを見下ろす切れ長の瞳。

そうだ、伊吹さんがいたんだった。


「…もう話は済んだように見えるが」

「伊吹さんがそう言うなら、そうなんでしょうね」


降参のしるしみたいに、ヒロが両手を広げてみせる。一向にまじめに応じようとしないヒロに、伊吹さんの眉間のしわが深まった。ヒロが吹き出し、「怖い顔しないでくださいよ」と広げた両手をひらひらさせた。
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