極上な彼の一途な独占欲
耳を塞ぎたくなるような破壊音。

ドアに弾き飛ばされるようにして、私は前方につんのめった。


「おっと、っと、美鈴、大丈夫?」


ヒロの腕に支えられ、危ういところで転ぶのを免れる。いったいなにが起こったのかとドアのほうを振り返って、唖然とした。


「伊吹さん…!」


肩で息をして、伊吹さんが戸口を背に立っている。

ドアは頼りなくぶらぶらと風に揺れていて、ドアノブと鍵のあったはずの場所は、やわな板が割れて中の空洞が見えている。はっと気づいた。そのドアノブは、私の手の中にある。向こう側半分とくっついたままのノブ。

慌てて置く場所を探し、とりあえずテーブルの上にそっと転がした。

そのテーブルに腰かけて、コーヒーをすすりながら、ヒロがにやにやしている。

それを見て、まだ息の荒い伊吹さんは、なんとも不本意そうに顔をしかめた。


「ハメたな」

「俺はただ、コーヒーを失敬しようとして怒られただけなんですけど」


ヒロと一緒に、なぜか私までにらまれた。

え、どういうこと、どういうこと…。だって関係者でもないのにいきなりコーヒーを注ぎ出したら、咎めたくなって当然じゃないか。

ヒロがカップをテーブルに置き、腰を上げた。


「じゃ、俺は退散しようかな。美鈴、これで借りは返したからね」


バイバイ、という感じに手を振って、私の横を通り過ぎる。


「私、なにか貸してた?」

「え、俺に傷つけられたの、根に持ってたんじゃないの?」

「………」


確かにその通りなんだけど、そういう軽い言い方されると腹が立つ。

むっとした私を、ヒロが振り返って楽しそうに笑った。


「俺は謝らないよ。こういう奴のまま生きてくって決めたから、謝ったら人生全否定になっちゃう。でもそこにお前みたいなピュアなのを巻き込んだのはかわいそうだったね。それは謝る。ごめん」

「えっ…」
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