極上な彼の一途な独占欲
「この仕事、本当に自分に合ってるのかなあ、この道に入って正解だったのかなあってずっと悩んでたんですけど」

「…みんなそうだよ」

「きっとそうなんですよね。この仕事は、求めてもらえる時間が短いです。私はどんなに頑張ったって、あと数年したら別の道を探さないといけない」


唇をきゅっと噛む姿を見て、胸が痛んだ。

そういう世界だから、で済ますのは簡単だ。需要があるから供給しているだけ、と責任転嫁するのも簡単。だけど、市場を作っているのはまさに私たち。

「考えたんです」と葵ちゃんが顔を上げた。その顔はなにやら、輝いている。


「私、自分が引退したら、美鈴さんみたいに、こういう女の子たちを応援する立場を目指します。モノ扱いせず、人間として成長を見守って、一緒に泣いて笑えるような、美鈴さんみたいな人になります」


泣いた。

人目もはばからず天井に顔を向けて、うえーんと声を出して泣いた。

葵ちゃんのほうがびっくりして、慌てて手近なテーブルから、紙ナプキンを大量に取って手渡してくれる。


「ありがとう」


ありがとう。この仕事、外から見るよりたぶん地味で、体力勝負で営業力も必要で、いつだって親請けと下請けに挟まれた微妙な立場だけど。

葵ちゃんたちみたいな子と時間を過ごせるから、やっていられるんだよ。

刺激をもらって、輝きをもらって、なけなしの反射光でみんなを少しキラキラさせるお手伝いをしているの。


「自信持ってね。葵ちゃんはすてきだよ」

「ありがとうございます」

「これからも頑張ってね。またいつか一緒に仕事しよ」


葵ちゃんの表情に、きりっとした仕事の顔が表れた。


「はい」


この世界は狭い。今年このブースに立った女の子が、次のイベントで他メーカーのコンパニオンを務めていることなんてざらにある。

名のあるメーカーのブースに立ったことは輝かしい経歴になり、次につながる。彼女たちはいつでも階段の途中に立っている。

その緊張感を、間近で見られるこの特権。
< 147 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop