極上な彼の一途な独占欲
ナプキンの束で涙を吸い取りながら、あてどもなく酔っ払いたちの間をさまよっていたとき、ふいに手を引かれ、気づいたら会場の外にいた。

音もなくドアを閉めた伊吹さんが、私の顔を見てぎょっとする。


「なんだ、また泣いてるのか。泣き上戸かお前」

「だって聞いてください、葵ちゃんが、私みたいになりたいって」

「わかったわかった、後で聞く」

「私、この仕事好きなんです。女の子たちって、みんなきれいで、強くて、磨くほど光るんです。どんな子も、必ず光るの」

「そうか」


私は手を引かれて歩きながら、なおも泣きじゃくった。


「自分を商品にすることに、完全に無頓着でいられる子なんていないんです。みんな迷いながら、それでも誰かを笑顔にしたいって、その一心で頑張るんです」

「それは感じた」

「ちやほやされて写真撮られて満足なんじゃないんです。彼女たちはプライドを賭けて、お客様を喜ばせているんです。ほんとにもう…」


口を塞がれるってこういうことか。

伊吹さんのキスを受けながら、私はそんなことを考えた。

押しつけられた唇から、ウイスキーみたいな強いお酒の気配がする。冷たくて、少し湿り気を帯びた、伊吹さんの唇。

…あれ、ここどこ?

キスされたまま、私はきょろきょろと目を動かし、周囲を探った。伊吹さん越しに見えるのは、エレベーターの階数表示だ。点滅する光が4階、5階…と上がっていくところだった。

そういえば、わずかに感じるG。


「…あの?」

「どのくらい飲んだ?」


私をエレベーターの壁に押しつけ、伊吹さんが問い詰めるような口調で言う。

まだ持ったままだったグラスを見下ろし、私は記憶を探った。


「ええと、ビール1杯と、カクテル2杯くらいです」

「今日はもうそれで終わりだ」

「どうしてです?」


言いながら無意識にひと口飲もうとしたところを、寸前でグラスに手で蓋をされてしまった。

ふっとGが緩んで、チン、と到着の音がする。

18階。

首をひねる私を、伊吹さんが冷静に見下ろした。


「記憶をなくされたら嫌だからだ」

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