極上な彼の一途な独占欲
「うちが欲しいものを見抜いてる。求めるキャラクターに徹して、ぶれずに安定したクオリティで記事を書けるライターというのは、実はそういない」

「はあ…」


なおもそのまま考え込んでいたかと思ったら、やがてぱたんと携帯を伏せた。前髪に指を埋め、私を抱き寄せ直してから、唸るような声を出す。


「あれのどこがよかったのか、聞かなくても少しわかってしまうあたりが、なんとも…」

「じゃあ私、自分で思うほど間違ってなかったんでしょうか」

「それはないだろ」


ばっさり否定された。

うう、甘い伊吹さん、戻ってきてよ。いや、甘いのも序盤だけだった。始まってみれば伊吹さんの"欲しがられるとやりたくなくなるたち"が顔をのぞかせ、この間と同様、酷い目に遭わされた。

午後の日差しがカーテン越しに部屋を暖めている。まだ午後になってそんな時間もたっていないのに、光はもう西に傾いた色味をしている。日が短い季節は、これが切ない。

煙草の香りが、記憶の彼方から過去を拾ってきた。

ヒロの部屋。ヒロの匂い。

現金なもので、こうして伊吹さんにかわいがられる立場になると、当時それなりに感じていた充足感のようなものが急に嘘っぽく思えてくる。

いつだって不安で、なにかを疑っていたんじゃない? あの男のそばで、心から安らいで、甘えたことなんてないんじゃない?

…いや、どうだろうな。バカだったから、きっと盲目的に、全力で甘えていた。

そんなけだるい回想をしていたら、視線を感じた。

伊吹さんが、腕の中の私をじっと見下ろしている。


「…なんでしょう」

「よくこの状況で、ほかの男のことを…」

「え、待って、待って、どうしてわかりました?」


ていうかこのやりとり、何度繰り返すの?

伊吹さんはふんと鼻で笑い飛ばし、私を放り出すと新たな煙草をくわえた。悠々とした仕草で火をつけ、ライターを枕の上に投げ捨てる。


「そのくらいわかる」

「嫉妬で思い出したんですけど」

「俺は嫉妬なんて言ってない」

「私もこう見えて、けっこう嫉妬するほうで」
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