極上な彼の一途な独占欲
配膳のおばさんが、お皿にどっさりライスを盛りながらこちらに笑顔を向けた。


「そちらのイケメンのお兄さんも、大盛?」

「冗談を。普通盛りで十分です」


聞き覚えのあるその冷ややかな声に、ぎょっとして隣を見た。

トレイを手に立っているのは、やはり伊吹さん。

間の悪いことに、山盛りカレーのお皿がどすんと私の前に置かれる。刺すような視線に耐えながら、それを自分のトレイに載せた。

無遠慮に眺めていた伊吹さんが、やはり無遠慮に淡々と言う。


「よくそんなに食えるな」

「…朝、食べそびれたので、二食ぶんです」

「融通の利く胃袋でうらやましい」


嫌味…!

仕方ないじゃないか、ずっと立っているとお腹がすくんだもの。って立っているのは伊吹さんも同じはずなんだけれど。

ご自由にお取りくださいとある福神漬けをたっぷりカレーに載せ、スプーンを取ってあいている席を探した。昼時なのでそれなりに人が多い。

できたらあまり人のいないところで、ゆっくり食べたい。

トレイを持って、どこかあかないかなと佇んでいたら、ぽんと背中を叩かれた。

振り向く前に、スーツ姿の人影が後ろから追い抜きざま、前方を指してみせる。


「あそこがあく」

「えっ、でも人がいますよ」


伊吹さんは気にもせず、男性ふたりが食事をしているほうへ向かった。

するとどうしたことか、こちらに気づいた男性が、どう見ても食べ終えていないにもかかわらず、ささっとトレイを手に席を立ってしまった。

あいた席に、平然と伊吹さんが座り、向かいに座るよう私を促す。

私はありがたく腰を下ろしつつも、そそくさと食堂を出ていく男性たちを呆然と見送った。
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