極上な彼の一途な独占欲
わざとらしくニコニコしながら、神部が私の頭をスリスリとなでる。

伊吹さんは私の顔を見て、おかしそうに「へえ」とうなずいた。


「伊吹さん、よろしかったら今度、お食事でも行きません? 私どもはこちらのクライアントさんの、海外ショーも含めたグローバルなコンサルティングをしているんです。伊吹さんのドイツ時代のお話もお伺いしたいわ」

「ええ、ぜひ」

「動物はお好き?」

「動物?」

「私、犬がいるんです。基本どこにでも一緒に行くので、もしお嫌じゃなければそれができるお店にと思って」

「ああ。大丈夫です、好きです」


へえ、伊吹さん、動物好きなのか。


「よかった! なにか、一緒に暮らしたご経験がおありに?」

「子供の頃から二頭のラブラドールと一緒に育ちました。数年前にどちらも旅立ちましたが、実家には今、キャバリアのミックスが」


本当に好きなんだろう、「拾ったのをもらってきたので、なにと混ざっているのか、よくわからなくて」と言う笑顔は柔らかい。

神部は自分が犬と化し、そんな伊吹さんに食いつきそうな勢いでメロメロになっている。


「すてき! じゃあお誘いしますわ。うちの子はミニチュア・ピンシャーです」

「賢くて頑固な犬種だ」

「さすが、ご存じですのね。警戒心が強くて。そこが魅力でもあるんですけど」


私にはさっぱりわからない犬談義になってしまったため、ぽつんと佇んで耳だけ澄ましているほかない。そんな私を伊吹さんが横目で見て「ああ」と言った。


「わかりますよ、僕も今、懐きそうで懐かないのが一匹いて」

「ご近所の子かなにか? 犬は受けた愛情を必ず覚えてますから、かわいがってあげたらきっと心を開いてくれますよ」

「だといいんですが」

「まあ、攻略に四苦八苦するのも楽しいですわよね」


楽しそうに笑い合って、再び歩きだしたふたりの後にくっつきながら、私は怒りのあまり全身から湯気が出そうになっていた。

伊吹さんの言っていた、あれは絶対に私のことだ。"一匹"ってなんだ。懐きそうで懐かないって、なんだ!
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