極上な彼の一途な独占欲
私の憤激になんて、当然気づいているんだろう、わざとらしいまでに私を無視して伊吹さんは神部と談笑を続けている。

はっきりした言葉もくれないくせに、私が落ちると確信している。

そういうところが頭に来る。

頭に来る!

くっそー!




「大型犬が好きな男はセクシーよね!」

「ごめん、全然わかんないわ」


午後になっても神部は興奮していた。私は遥香のステージングを見守りながら、いつになくはしゃいだ様子の神部にあきれていた。

大型犬好きがセクシーってなによ、どうつながるのよそれ。


「大きくて賢い犬を愛せるのは自分に自信がある証拠よ」

「飼ってたのは伊吹さんの親御さんでしょ?」

「うるっさいわね細かいことを!」

「いたたた!」


両方の拳で頭をぐりぐりとやられ、たまらず悲鳴をあげた。

少し先で、社員の人とステージを見ていた伊吹さんがこちらを見る。声が大きすぎたかとはっとしたのだけれど違ったらしく、彼は小さく私に笑いかけてきた。

ついクライアントであることも忘れ、私は思いきり顔をそむけた。

懐きかけの犬扱いされた屈辱がまだ残っているのだ。


「神部、サプライヤーのほう見に行こうよ」

「どうしたの、いきなり」

「いいでしょ、ああいうところにポッとすごいかわいい子いたりするもん」

「そうだけど。あたしは伊吹さんを見ていたいのにー」

「仕事、仕事!」


ステージが終わったところで、私は神部の手首をむんずと掴み、違うホールへ行くためエスカレーターを目指した。

なんとなく、背後から伊吹さんの視線を感じる気もする。

ふん、と顎を上げ、絶対に振り向くまいとした。

当分許すもんか!

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