極上な彼の一途な独占欲
「犬扱いされて頭に来てるのか」

「なんのことです?」

「そういうところが"懐きそうで懐かない"なんだよ。自覚しろ」


うぐっ…。

唇を噛んで、往生際悪く彼から目をそらす。


「そちらこそ自覚してください、ちょっと図に乗ってませんか」

「俺がなにを図に乗ってるんだ」

「"懐きそう"とか!」

「そこに腹を立ててたのか」


得心したように言われ、結局さらけ出してしまったと気づいた。

ああもう、バカ…。


「…そこにっていうか」

「"なかなか懐かない"とでも言えばよかったのか。それなら腹も立たない?」

「いえ…」


実際、少しは懐いてますんで、その言い方だとちょっとさみしいです。というかそもそも懐くとか懐かないとか、その言葉のチョイスも不本意なような、いやでもそれは別に、今となっては気にならないような。

結局なにがどう不満なの、私…。

むすっとうつむいてしまった私の顎を、なにかがくすぐった。伊吹さんの指だ。

はっと顔を上げると、優しい視線に見つめ返される。


「受けた愛情は覚えててくれるんだって?」

「それ、犬の話ですよね?」

「そうだっけ?」


肌に触れるか触れないかの、羽のような感触がすいと頬のほうへ移動する。そしてだしぬけに、耳を隠していた髪に指が差し込まれた。

身体中が反応して、びくっと跳ねた。

えっ、伊吹さん、なに…。


「お前の話しか、した記憶ないけどな」


この狭い空間に、ふたりしかいなくて。多少音を立てようが誰にも聞こえない。

そんな状況で、この距離で、私の好きな声でそんなことを言われたら。
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