極上な彼の一途な独占欲
「もうー!」


あんなに頭に来る男が世の中にいていいわけ?

涙が出てきた。

ずるずると壁を背中につけてしゃがみ込む。ちょっと落ち着いてからでないと出られない。

もう…。

伊吹さんの触れた耳が熱い。ひどい、悔しい。


「ずるい…」


ひざを抱えて、私はしばらく、その場所を動けずにいた。


* * *


うわっ、なにこれ!

翌土曜日、開場時刻を控え室で迎えた私は、少ししてからブースへ行き、あまりの来場者の多さに目を見張った。

通常、入場したお客様は手前のブースから順に見ていく。そうすると自然と国内メーカーを先に見ることになり、インポートブランドであるこのブースに人波が辿り着くのは、ある程度時間がたってからだ。

それなのに、この光景はどうだ。

大量のお客様が、入場してまっすぐにこのブースを目指したとしか思えない。


「あっ、天羽さん、ちょっと相談」


人込みの中で、中山さんが私を見つけ、駆け寄ってきた。


「すごい人ですね」

「でしょ、見てわかる通り、対応しきれてないんだよ」

「休みの子も呼び出します?」

「できるかなあ。あと今日はほんと申し訳ないんだけど、休憩を最小限で」

「わかりました」


やむを得ない。こういうときもある。

ぱっと見渡しても、スタッフを探している様子なのに放置されているお客様が数名いる。まったく手が足りていない状況なのがわかる。

そこに伊吹さんも人込みをかき分けてやってきた。
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