極上な彼の一途な独占欲
目を閉じるって、こんなに無防備な行為だったっけ。伏せた瞼を見ているだけで胸が苦しくなるなんてこと、あるんだっけ。

一度わずかに離れ、温もりが残るうちにまたすぐ重なった。私たちの距離を反映しているような、様子見のキス。最初よりは積極的に、お互いの唇が柔らかく絡むのを楽しむ、どこまでやって許されるか試している、そんな感じ。

突き上げる鼓動にめまいを起こしそうになって、私も目を閉じた。


やがて名残を惜しむように、ゆっくりと唇は離れた。

それを追いかけて、言葉が口からこぼれ出た。


「…私のこと好きですか?」


伊吹さんが、一瞬きょとんとした後で、おかしそうに笑う。私の耳の後ろをくすぐりながら、優しくうなずいた。


「回り道して帰ろうと考えるくらいには」


…あ。


「『せっかくだし』って、そういう意味ですか」

「どういう意味だと思ったんだ」

「イルミネーションを見逃したくなかったのかなって」

「俺がそんなイベント好きに見えるか」


見えませんよ。だからあのとき、驚いたんじゃないですか。

他愛もない、会話をするためだけの会話。お互いの声を聞きたくて、これからしようとしていることから意識をそらして、気恥ずかしさをごまかしたくて。

今度のキスは、気持ちのままのキスだった。

深くはない。まだそこまでするときじゃないと、お互いわかっている。だけど一瞬でも離れるのが嫌で、相手の唇を追って、食んでは息をついて、吐息の合間にまた噛んで。

ぶつけるような勢いのときもあって、優しく押しつけるだけのときもあって。


「…明日」

「はい」

「午前中、一瞬会社に顔を出したいんだ。だから会うのは昼前に」

「じゃあ私、伊吹さんの会社のほう行きます」


「うん」と言いながらまたくれる、柔らかなキス。こんなに優しくて温かいキスをする人だなんて、知られたら魔王のあだ名も返上だ。
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