極上な彼の一途な独占欲
「どの子がやったのかはわからないのね?」

「…聞かなかった」


ただ余裕がなくて、そんなこと聞けなかっただけだけれど、聞かなくてよかった。聞いていたら私は、その子に対して仕事上の態度を保てるか自信がない。


「伊吹さんたちに曖昧な話が伝わる前に、こちらから報告したほうがいいわね」

「そう思う。頼める?」


任せた私に、暢子が変な顔をした。大きなスプーンでオムライスを口に運びながら、じろじろとこちらを観察する。


「…いいけど」

「お願い」


視線を避けるように、食事に集中しているふりをした。




身体が重い。

小さなほうの控え室を使ったら伊吹さんと遭遇する可能性が増えてしまうので、それもためらわれ、結果として休憩をほとんど取らない一日となった。

きっとそのせいだけじゃなく、気持ちも晴れない。

ステージングの合間をぬって、他社のブースの視察をして戻ったら伊吹さんが誰かと話をしていた。

その相手を見てぎょっとした。

ヒロだ。

神経を疑うことに、ヒロは私を見つけると、気安く片手を挙げて挨拶をしてきた。伊吹さんが振り返り、「お疲れ」と声をかけてくれる。


「お疲れさまです」

「知り合い?」

「あ…」


私とヒロを指さす仕草から、ヒロともかなり気軽な関係なのが見てとれた。

ピシッとしたスーツの伊吹さんに対し、今日もラフな風体のヒロが先に口を開く。


「こいつの前いた会社、雑誌関係なのご存じですか? 俺も同業界なんで、共通の知り合いとかもいて」

「ああ、なるほど」
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