極上な彼の一途な独占欲
『僕のひとつ下なんですね!』

「そうですか」

『抱負は?』

「ええと、体力が落ちてきた気がするので、健康管理に気を配ろうと」

『わかります、20代の頃のようにはいかなくなりますよねー、なにもかも』

「いいジム知ってたら紹介してもらえないかな?」


30代男の雑談になってきたのを、「あのー」と本流に戻したのはワゴンを運んできた男性スタッフだった。中山さんがはっと司会の使命を思い出し、『じゃあみなさんで』と音頭を取った。

"ハッピーバースデー・トゥー・ユー"の大合唱が始まる。

伊吹さんは居心地悪そうに、「トゥー・伊吹さん」と歌われた場面ではことさらに所在なさそうに苦笑いをしていた。


「伊吹さんも、あんな顔するんだ」

「かわいい」


背後で女の子たちの、そんな会話が聞こえる。

彼の目が途中、救いを求めるように私を見た。目が合って、お互いなんとなく笑ってしまう。

…どうしてこの状況で、私のほうを見るの、伊吹さん。

私は手拍子をしながら、つまらない誇らしさを感じ、そんなものを感じてしまう自分の浅ましさと単純さに憂鬱になった。


「おめでとうございます。今日だったんですね」


その場でカットされたケーキにみんなが群がる中、伊吹さんに声をかけたら、そばにいた中山さんが「違うんだよー」と言った。


「ほんとは昨日だったんだよ。でも伊吹さん、お休みだったから」

「え…」


甘党の中山さんは、紙皿に載せたケーキをぺろっと平らげて、ほかの人と会話しに行った。

ココアの生地はだいぶビターで、伊吹さんの好みに配慮して用意されたに違いない。実際彼は、さして苦でもなさそうに口に運んでいる。

目が合った。


「…昨日、言ってくださればお祝いできたのに」

「別に、祝ってもらうつもりで呼び出したわけじゃないからな」

「でも」
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