不器用な彼氏
『ありがとうね』

海成がお姉さんに命じられて、風呂掃除をしている間、二人で洗い物をしながら、ポツリと話し出す。

『?』
『海の恋人になってくれて』
『え、なッ、何ですか?いきなり』
『ホント、身内として感謝してるのよ?』

洗ったお皿を、水切りかごにそっと置きながら、フッと微笑む。

『あの子、あんなでしょう?きっと職場でもうまくコミュニケーション取れてないだろうし、不器用で正直すぎるから、人と衝突することも多いはず…でしょ?』
『それは、えっと…』

事実だけに、否定できずにいると、透かさず『あなたも正直ね』と、笑われる。

『今まで彼女がいたこともあるみたいだけど、私の知る限り、長く続いたことないみたいだし…まぁあの性格じゃ、当たり前だけどね』
『でも、優しいですよ…とても』
『そう?』
『…少し、分かりずらいですけどね』

そう言って、互いに笑い合う。お姉さんは、海成の本当の優しさをわかってるんだ。だから、もどかしくて仕方ないのかもしれない。

なんて愛情溢れた、不器用な姉弟なのだろう。
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