不器用な彼氏
波打ち際まで来て立ち止まると、しばらく目の前に広がる夜景を堪能する。澄んだ空気で海辺に煌めくそれは、まさに絶景だった。
海から来る風が身を震わせ、思わず腕を組むと、アイツが遠慮がちに俺の上着の裾を掴む。
『これぐらい良いでしょう?』と訴えるアイツに、拒否できる理由など、何も見当たらない。
そっと寄り添うように佇む、アイツのいる左側だけがやけに暖かく、今ここで、後ろから抱きしめたら、どんなに暖かいだろうと、邪な衝動に駆られ、それに耐えるために、正面の海を見続けた。
『何か帰りたくない…な』
唐突にアイツがつぶやいた。もちろん即座に否定していたが、それが何を意味するのか、互いに分からない歳でもあるまい。
もしかしたら、俺と同じような気持ちなのかもしれないと、パニくる頭でアイツの真意を探っていると、それを勘違いしたアイツが、目の前で、頬を赤らめ目をつぶる。
背を伸ばし、無防備な顔で近づくアイツに、堪らず触れてしまいそうになったその瞬間、ハタと思い留まる。
さっきのセリフの真意もわからないまま、ここで先に進めて、俺は途中で引き返すことができるだろうか?答えは否だ。咄嗟にそう判断し、アイツを突き放すと、振り切るように海岸を後にする。
砂浜に置き去りにしたアイツの、呆然とする顔が浮かんだが、一度でも振り返ったら、俺の決心は、脆くも崩れ去るに違いないと、真っすぐ突き進む。
閑散とした海岸から、人々が行きかう雑踏に戻り、一息つく。人混みが苦手な俺が、人であふれる所に出ただけでホッするなど、思わず苦笑した。
海から来る風が身を震わせ、思わず腕を組むと、アイツが遠慮がちに俺の上着の裾を掴む。
『これぐらい良いでしょう?』と訴えるアイツに、拒否できる理由など、何も見当たらない。
そっと寄り添うように佇む、アイツのいる左側だけがやけに暖かく、今ここで、後ろから抱きしめたら、どんなに暖かいだろうと、邪な衝動に駆られ、それに耐えるために、正面の海を見続けた。
『何か帰りたくない…な』
唐突にアイツがつぶやいた。もちろん即座に否定していたが、それが何を意味するのか、互いに分からない歳でもあるまい。
もしかしたら、俺と同じような気持ちなのかもしれないと、パニくる頭でアイツの真意を探っていると、それを勘違いしたアイツが、目の前で、頬を赤らめ目をつぶる。
背を伸ばし、無防備な顔で近づくアイツに、堪らず触れてしまいそうになったその瞬間、ハタと思い留まる。
さっきのセリフの真意もわからないまま、ここで先に進めて、俺は途中で引き返すことができるだろうか?答えは否だ。咄嗟にそう判断し、アイツを突き放すと、振り切るように海岸を後にする。
砂浜に置き去りにしたアイツの、呆然とする顔が浮かんだが、一度でも振り返ったら、俺の決心は、脆くも崩れ去るに違いないと、真っすぐ突き進む。
閑散とした海岸から、人々が行きかう雑踏に戻り、一息つく。人混みが苦手な俺が、人であふれる所に出ただけでホッするなど、思わず苦笑した。