不器用な彼氏
アイツが海岸から戻るのを待つ間、何気なく目の前を通り過ぎる、人の波を眺めていた。
この時刻になると、やはり恋人たちの幸せそうな姿が、やけに目についた。寒さのせいもあるが、身を寄せ合い、手を繋いだり肩を寄せ合うことで、嬉しそうにしている女性が、目の前にあふれていた。
ふと、アイツも本当はこんな風に、ただ触れ合いたいだけなのかもしれない、と思う。
男と女とは、根本的な身体のつくりを含め、いろいろ違う。
いつだったか姉貴が、好きな女性を無理やり抱こうとしているドラマのシーンを観ていて、
『別にそんなことしなくても、女性は満たされるのにね』
とつぶやくのを聞き、その場にいた俺が、『好きだから抱きたいと思うんだろ?』と反論したら、『お前の愛情表現はそれしかないのかよ』と、笑われた。
その時は、ただバカにされた気がしてムッとしたが、今は少し分かるような気がしていた。
確かに、アイツに触れるたびに、男として抱きたい衝動にも駆られるが、それ以上に満たされる何かを感じていた。
それは、抱くことで得られるものとは、少し違うかもしれないが、それに似た種類の高揚であることは、間違いなかった。触れている部分から、伝わる愛情や自分だけに向けられる安心感が、それなのかもしれない。
“俺は何を焦っていたのだろう?”
アイツとはまだ始まったばかりで、性急に先を急ぐ必要はない。俺の最も苦手な、甘い言葉を囁くなどしなくても、伝わる方法があるのならば、それで充分ではないか?
手を握った時、肩が触れた時、髪に触れた時や目が合った時、どんな瞬間でも、想いを込めれば伝わるのかもしれない。この手に抱くのは、まだ先に取っておけば良い。
そう思い至ると、このところアイツといる時に、ずっと感じていたモヤモヤが晴れる気がした。
と同時に、本当にそんなことで伝わるのか、確かめてみたい欲求に駆られると、ちょうど海岸の砂浜からアイツが戻ってきた。
この時刻になると、やはり恋人たちの幸せそうな姿が、やけに目についた。寒さのせいもあるが、身を寄せ合い、手を繋いだり肩を寄せ合うことで、嬉しそうにしている女性が、目の前にあふれていた。
ふと、アイツも本当はこんな風に、ただ触れ合いたいだけなのかもしれない、と思う。
男と女とは、根本的な身体のつくりを含め、いろいろ違う。
いつだったか姉貴が、好きな女性を無理やり抱こうとしているドラマのシーンを観ていて、
『別にそんなことしなくても、女性は満たされるのにね』
とつぶやくのを聞き、その場にいた俺が、『好きだから抱きたいと思うんだろ?』と反論したら、『お前の愛情表現はそれしかないのかよ』と、笑われた。
その時は、ただバカにされた気がしてムッとしたが、今は少し分かるような気がしていた。
確かに、アイツに触れるたびに、男として抱きたい衝動にも駆られるが、それ以上に満たされる何かを感じていた。
それは、抱くことで得られるものとは、少し違うかもしれないが、それに似た種類の高揚であることは、間違いなかった。触れている部分から、伝わる愛情や自分だけに向けられる安心感が、それなのかもしれない。
“俺は何を焦っていたのだろう?”
アイツとはまだ始まったばかりで、性急に先を急ぐ必要はない。俺の最も苦手な、甘い言葉を囁くなどしなくても、伝わる方法があるのならば、それで充分ではないか?
手を握った時、肩が触れた時、髪に触れた時や目が合った時、どんな瞬間でも、想いを込めれば伝わるのかもしれない。この手に抱くのは、まだ先に取っておけば良い。
そう思い至ると、このところアイツといる時に、ずっと感じていたモヤモヤが晴れる気がした。
と同時に、本当にそんなことで伝わるのか、確かめてみたい欲求に駆られると、ちょうど海岸の砂浜からアイツが戻ってきた。