不器用な彼氏
異動してからしばらくは、さすがに新しい業務を覚えるのに時間を費やし、アイツとは、会うことはおろか、電話で話すことすら儘ならない日が続いた。
もちろん同じ建物内にいるのだから、会おうと思えば会えるのだが、敢えてそうしなかったのは、集中して新しい業務を覚えたかったことと、アイツに甘えるようなことだけは、男のプライドとして絶対にしたくねぇと、思っていたからだ。
今までの女だったら、二日も連絡がないだけで、ギャーギャー騒ぎ出していただろうが、その点アイツは大人だった。おかげで、仕事に没頭でき、ひと月もすると、だいぶ仕事も覚えて、ほんの少しだが、余裕も出てきた。
この頃には、深夜にどちらからともなくする電話が、俺らの日課になっていた。
俺もアイツも、メールやラインは全くといってしない。何を話すわけでもないが、直接電話をして、ただ声が聞ければ、それでよかった。姉貴は、そんな俺らを、『中坊カップルか』と呆れていたが、俺だって、何も考えていないわけじゃない。今の仕事が落ち着いたら、アイツをどこか旅行にでも、連れて行こうと、密かに考えていた。
そんな5月の半ば近く。俺に、通常の業務以外のとんでもない仕事が、降りかかってきた。
『事務の女に?』
江守に続く、ダメ係長と名高い小日向に、広域のメンバーが集められ、新社屋内に一緒になった総務課から、事務職の女性に、この広域建設部の仕事の詳細を教えてやってほしいと頼まれる。
総勢4人いる広域担当の中で、一番のベテランである本庄さんは、若い小日向の話など、全く聞く気もないらしく、話の途中で『俺、パスね、あとよろしくぅ』と、さっさと姿を消してしまう。
結局、残る3人の中で、新人でもあり、今大きな案件を抱えていないのは俺だけで、必然的にその仕事(?)は、俺が受け持つことになってしまった。
教える事務の女は、“森下”と言った。
年齢は20代前半だろうか。小日向の話じゃ、どこぞの有名大学を出て、将来を有望されている才女だとか言っていたが、俺には全く関係ない話だ。
とはいえ、さすがに20代早々では、去年のアイツみたいに邪険に扱って、万が一にも、泣かれでもしたら、こっちが困る。俺は、出来る限り、怖がらせない程度に接することを、余儀なくさせられた。
もちろん同じ建物内にいるのだから、会おうと思えば会えるのだが、敢えてそうしなかったのは、集中して新しい業務を覚えたかったことと、アイツに甘えるようなことだけは、男のプライドとして絶対にしたくねぇと、思っていたからだ。
今までの女だったら、二日も連絡がないだけで、ギャーギャー騒ぎ出していただろうが、その点アイツは大人だった。おかげで、仕事に没頭でき、ひと月もすると、だいぶ仕事も覚えて、ほんの少しだが、余裕も出てきた。
この頃には、深夜にどちらからともなくする電話が、俺らの日課になっていた。
俺もアイツも、メールやラインは全くといってしない。何を話すわけでもないが、直接電話をして、ただ声が聞ければ、それでよかった。姉貴は、そんな俺らを、『中坊カップルか』と呆れていたが、俺だって、何も考えていないわけじゃない。今の仕事が落ち着いたら、アイツをどこか旅行にでも、連れて行こうと、密かに考えていた。
そんな5月の半ば近く。俺に、通常の業務以外のとんでもない仕事が、降りかかってきた。
『事務の女に?』
江守に続く、ダメ係長と名高い小日向に、広域のメンバーが集められ、新社屋内に一緒になった総務課から、事務職の女性に、この広域建設部の仕事の詳細を教えてやってほしいと頼まれる。
総勢4人いる広域担当の中で、一番のベテランである本庄さんは、若い小日向の話など、全く聞く気もないらしく、話の途中で『俺、パスね、あとよろしくぅ』と、さっさと姿を消してしまう。
結局、残る3人の中で、新人でもあり、今大きな案件を抱えていないのは俺だけで、必然的にその仕事(?)は、俺が受け持つことになってしまった。
教える事務の女は、“森下”と言った。
年齢は20代前半だろうか。小日向の話じゃ、どこぞの有名大学を出て、将来を有望されている才女だとか言っていたが、俺には全く関係ない話だ。
とはいえ、さすがに20代早々では、去年のアイツみたいに邪険に扱って、万が一にも、泣かれでもしたら、こっちが困る。俺は、出来る限り、怖がらせない程度に接することを、余儀なくさせられた。