不器用な彼氏
『進藤さんって彼女さんいるんですかぁ?』
『…今、仕事中だ。関係ない話するな』
『あ、誤魔化した』
『誤魔化したわけじゃ無え』
『え~、進藤さん、いつも仕事の話ばかりですし、もう少し会話のキャッチボールしましょうよ』
『する必要ない』
『コミニュケーションは大事ですって』
『……(怒)』
この森下という女、スラリとしたボディに、男受けしそうな顔をしてるが、俺にとっては、最も苦手なタイプの女だった。しかも、一緒にいる間、やたらと近くに寄っては、いちいち女を意識させるしぐさをしやがる。
その度に香る、甘ったるい匂いも、俺には苦痛でしかない。最近、女と言えば、アイツとしかまともに話していないのだから、ついつい比べてしまうが、アイツといるときは、こんな不快な思いなど、一度もなかったはずだ。
最も、女としてのフェロモンという観点なら、森下の方が、数段上だろうが…。
『…フッ』
『あ!今、誰か思い出しましたね?』
『…思い出して無え』
『ん~、今の感じだと、浮かんだのは女性ですよね?』
『誰も浮かんで無えって』
『もしかして、彼女さんですか?』
『…はぁ(呆)』
この女の一番苦手なところは、頭の回転の速さだ。
これで、バカならまだ可愛いものを、噂通りの才色兼備で、まだ入局して2~3年のはずだが、仕事は完全にマスターしている様子。広域建設部の仕事だって、業務の合間に1週間の期間で、と言われているが、既に3日で、ほとんど理解しているようだった。
それなら、もう、勘弁してほしい。なぜだか、無性にアイツの声が聞きたくなる。
今夜は、こっちからアイツに電話しよう。
そう思うだけで、少し気が楽になるから不思議なものだ。