不器用な彼氏
…このままだと、本当に終わってしまうかもしれない。
本当にそれで良いのか?と、自問を繰り返していると、偶然にも、アイツと東の噂話が耳に入った。

この時、俺は初めて、アイツの言ったことの意味を知った。

真実はともかく、俺じゃない誰かが、アイツに手を出そうとしているのかもしれないと思うと、不愉快極まりなかった。例えアイツの方は、その気が無かったとしても、想像するだけで気が狂いそうだ。

ここまで来て、初めて認めざるをえないとは、俺も相当バカだったと思う。

プライドも何も関係なく、アイツを誰にも渡したくないと、ハッキリと自覚する。
自分が、こんなにも独占欲が強いのかと驚いたが、すでに頭で考えるより、身体が反応していた。

もう、迷いは無い。

業務時間内だったが、俺は、強引にアイツを呼びだした。

完全に公私混合しているのはわかってはいるが、どうしても、今アイツに会って、今伝えたいことがあった。

当然、TMは、接客がメインである業務なのだから、来客があれば、すぐに来られるとは限らなかったが、それでもずっと待つつもりだった。

自分が指定した備品庫の中で、じっと待ってる途中、これじゃ東より俺の方がストーカーじゃねぇか、とも思ったが、ここまで来たら引くに引けない。

ただし、もし、このままアイツが来なかったら、その時は、きっぱり諦める心づもりだった。

それよりも、アイツは絶対、ここに来る。なぜか、そう確信していた。
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