不器用な彼氏
『結局、どこ行くことに決めたのよ?』
『熱海』
『えぇ~何それ!ディズニーとかじゃないの?』
『即効、却下した』
『ミラコスタとかさぁ』
『ミラ?ってなんだ、それ?ってか、別にどこでもいいだろ』
『菜緒ちゃん、可哀想に…しかも熱海って…むしろ何か、いやらしいわね…』
『花火大会があんだよッ!』
『あら!それは良いわね…って、アンタ、何一人で焦ってんのよ』

ったく、昔っから、この女はそうだ。

確実に俺で遊んでやがる。とはいえ、来週の旅行は、姉貴の車を借りることになっているので、邪険には扱えない。ここにいると、確実に姉貴にいじられるだけだと思い、サッサと身支度して、早めに出かけることにする。

早速、洗面に向かおうと、リビングを出ようとすると、姉貴に呼び止められ、次の瞬間、とんでもないことを提案される。

『ねえ海!今日、菜緒ちゃんココに連れてきなさいよ!』
『はぁ?』
『映画なんて、いつでも見れるでしょう?』
『いきなり、何言い出すんだよ?ダメに決まってるだろッ』
『彼女に聞いてみなきゃ分からないじゃない?ね?』
『絶対ダメだ』
『あっそう…車、貸すのやめるわよ?』
『なっ…』

結局、姉貴には逆らえなかった…。

とりあえず、待ち合わせ場所にきたアイツに伝えると、一瞬さすがに躊躇するが、両親がいないことと、姉貴が会いたいと言ってることを伝えると、逆に姉貴に会いたいからと、アッサリOKしてくれる。

実のところ、俺は付き合った女を、家に招き入れたことがない。

ましてや、この歳で両親のいる実家に、女性を連れて行くとしたら、それなりの理由もいるだろう。
俺たちがつきあうとは、そういうことなのだと、つくづく思い知る。
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